特集記事〜弁護士〜

激務の代表"弁護士"も働き方改革の時代に法曹界の採用トレンドと、優秀な人材が集まる事務所の秘密に迫る!

C&Rリーガル・エージェンシー社エージェント事業部シニアコンサルタントの松本宣幸氏

法曹界、なかでも弁護士の仕事は激務として知られ、それが常態化している。「9時〜5 時の5時は朝の5時」そんなブラックジョークもあるとかないとか。しかし昨今は「働き方改革」の風が少しずつ吹き始めている。特に、転職の際には、「ワークライフバランスを確保できるような働き方ができる法律事務所に」という声が増えてきた。優秀な人材を確保するためには、新しい働き方への対応を進めることが必須条件になりつつある。弁護士専門のエージェント会社であるC&Rリーガル・エージェンシー社のシニアコンサルタント松本宣幸氏に最近の法曹界の採用トレンドを聞いた。


「弁護士の採用トレンドは、ここ数年はおしなべて売り手市場です」。
こう語るのは、法曹界の人材の転職エージェントとして日々多くの弁護士や法律事務所で働く人々に接しているC&Rリーガル・エージェンシー社の松本宣幸氏だ。司法制度改革に伴う新司法試験制度の導入により、司法試験の合格者は増えた。一方で弁護士の就職・転職先は、法律事務所だけでなく、企業の法務部門などにも拡大した。こうしたインハウスローヤーの急増もあり、弁護士の人材確保は難しくなってきている。
この影響を特に受けているのが、中小の法律事務所だ。ここで、人材確保のキーワードとなるのが「働き方改革」だという。「弁護士業界では、深夜残業や休日出勤といったハードな仕事環境がいまだに常態化しています。しかし昨今はこういった働き方に疑問を抱く弁護士が増え、より働きやすい仕事環境を求める傾向があります」(松本氏)。

若い弁護士の間で注目され始めたワークライフバランス

「とある法律事務所では、男性3人のパートナー弁護士のうちの1人が、家族との時間を最優先する働き方を提唱したことで、事務所の体制が変化しました。運動会や三者面談のような子どもの学校行事があれば休みを取れるようになり、事務所内で情報共有ができて、お客さまに迷惑がかからなければ出退勤の時間も自由にできるようになったのです。この他にも30代〜40代の若い弁護士の方が経営する法律事務所で同様の動きが活発化しています」(松本氏)。

こうした働き方改革は、弁護士業界においてまだ割合が低い女性たちにも影響を与え始めている。女性の弁護士比率は2016年度でようやく18.6%(日本弁護士連合会、弁護士白書2016年版)になった程度で、社会一般の女性進出に比べるとかなり低い。

しかし、これまでの体制に変化の兆しが現れはじめた。、2006年に実施された新司法試験制度によって女性の合格者数が増えたことが大きなきっかけだ。それ以前は、女性比率が低いこともあり、女性のライフイベントに合わせた働き方改革がなかなか進まなかった。しかしこれからは、2006年以降に弁護士となった女性たちが子育て世代にさしかかることもあり、ワークライフバランスを見直す時期を迎えている。これまでは2割弱だった女性比率が今後は増えていくのは必至で、弁護士事務所としては、働き盛りの彼女たちの戦力を失うのはあまりに痛手が大きい。そうした流れを受けて、テレワーク環境を整備し、「事務所勤務は10時~16時でOK」といった柔軟な働き方を認める事務所も出てきた。

このような法律事務所側の変化に、働く弁護士側も注目するようになってきている。松本氏は「女性の弁護士にとっては働き続ける場を確保でき、事務所にとって優秀な人材を継続して雇用できます。双方にメリットがあるのです」と語る。女性はもちろん、ワークライフバランスを確保しながら仕事を全うしたいと願う若い世代の弁護士を中心に、新しい働き方の提案は着々と受け入れられているようだ。

ITツールを活用し働き方の多様化に挑戦

激務が常態化してきた弁護士の世界で、働き方改革を進めるにはどうしたらいいのだろうか。「いい人材に来てもらうためには、まずは経営層・パートナーが働き方についての意識改革を行う必要があります。それに加えて、ITツールを活用し、働き方の多様化に対応するインフラを整備することが有用でしょう」と松本氏は語る。

従来の法律事務所では、ホワイトボードやExcelのワークシートなどでスケジュールや案件を管理し、かつ担当案件ごとに情報が分散していることが多い。スケジュール調整や問い合わせが発生するとその都度担当弁護士に連絡・確認が必要になる。弁護士は外出も多いため、電話やメールのみではコミュニケーションに時間がかかり、業務が滞ってしまう。そういった事務所が、グループウェアなどのITツールを導入し情報共有を進めれば、スケジュール調整はグループウェア上の空いている時間で行い、問い合わせについても、案件情報を検索して確認できるものについては一次回答するといった形で業務の効率化が進められる。また案件ごとに調べた法令・判例についての情報や作成した資料をグループウェアに登録しておけば、事務所内でのナレッジ共有につながり、生産性を向上させることも可能となる。

さらにITツールの活用は、働く場所や時間の制約を少なくする効果も期待できる。「以前だと仕事に関する情報の持ち帰りを制限する法律事務所が多かったのですが、セキュリティを確保したクラウドサービスなどを使うことで社外でも仕事ができるようになってきました。」(松本氏)。

このように働き方改革に向けた具体的な取り組みを始める事務所が生まれる一方、この動きはまだ業界全体にまでは及んでいない。そのため、「すでに取り組みを始めている一部の法律事務所に優秀な人材が続々と集まっています」と松本氏は語る。

働きやすい環境作りの整備が業界変革への一歩

人材確保に大きな変化が押し寄せている法曹界に、松本氏は厳しい見立てをする。「一部の大手を除き、法律事務所は二極化しつつあります。今までのやり方のまま働き方を変えない事務所は、今後、優秀な人材の確保が難しくなってくるでしょう。一方で、働き方改革に乗り出して好循環をつかんだ事務所は、人材が仕事を呼び、顧客が顧客を招くことで業績拡大していきます」。

売り手市場が続き、さらに今後、労働人口が減っていく時代になると、ますます採用環境は厳しくなる。「時間に制約がある人でも、子育て世代の女性でも、適材適所で人材を活用していくことが、発展的な事務所経営の要諦のひとつであることに早く気づく必要があります」と松本氏は語る。

弁護士はもちろん、法律事務所で業務をサポートするパラリーガルも含めて、働きやすさが法曹界における人材確保のキーワードに躍り出る。そうした時代の流れに、どのような仕組みを作って働き方改革を実現していくか、法律事務所の経営者は今、岐路に立たされていると言えよう。

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